中小企業診断士が語る!知れば得するノウハウ集

松平 竹央

皆さま、こんにちは。一般社団法人城西コンサルタントグループ(JCG)の松平です。

今回(第17回)は、ネーミングと商標登録についてご紹介します。 昨年大流行したPPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)は、これとは無関係の者によって商標登録出願されたことが話題となりました。
商品やサービスのよい名称と登録商標をセットで自分のものにできれば、それは利益を生み出すための強力な道具となります。
反対に、他人に自社の商品やサービスと関連の大きい名称について登録商標を取得されてしまうと、自社のビジネスを行う上での障害となる場合があります。

Vol.17 よいネーミングと商標登録(前編)

ネーミングとは? 登録商標とは?

ネーミングとは、商品やサービスに名前を付けることです。ネーミングは、ブランド戦略の実践手段の1つです。よいネーミングには、それ自体に広告宣伝効果などが期待できます。
カタログ、Webサイト、展示会等で自社の商品やサービスをPRしていく上でも、分かりやすく識別力のある商品名やサービス名を考えて顧客に伝えていくことが大切です。

よいネーミングを行うためには勘所があり、それは次回(後編)にてご紹介します。

私がよいネーミングだと思うものとしては、商品名であれば例えば「ポッキー」、「写ルンです」、「クイックルワイパー」などがあります。サービス名称であれば、「宅急便」、「サンキューカット」、「てもみん」などです。これらの名称は全て登録商標となっています。

私の事業領域である経営コンサルティングの関連では、「ランチェスター戦略」、「ブルー・オーシャン戦略」、「コトづくり」などが登録商標となっています。

商標とは? 登録商標とは?

商標とは、平たく言いますと誰の商品やサービスなのか表す名称やマーク、シンボルのことです。 登録商標とは、特許庁による審査を経て、商標権を付与する商標として登録されたもののことです。

解説的なことは後回しにして、まずは住宅ビジネス関連ではどのような商品名やサービス名が登録商標となっているかを見てみましょう。

まずは、すでに登録商標となっているものです。つまり、特許庁の審査が終わり、その名称に関しての商標権が認められているものです。

No. 名称 出願人または権利者 商品・サービス区分 ステータス
1 リハウス 三井不動産リアルティ(株) 36、37 登録(存続)
2 新築そっくりさん 住友不動産(株) 6、36、37 登録(存続)
3 百年住宅 百年住宅(株) 19 登録(存続)
4 住宅診断士 積水化学工業(株) 36、37 登録(存続)
5 住まいるコンシェルジュ 三菱マテリアル不動産(株) 36、37、39、43、44 登録(存続)
6 注文住宅 (株)リクルート 9、16 登録(存続)
7 PROUD 野村不動産(株) 16、36、37 登録(存続)

次に、商標登録出願がされているものの、まだ審査中のものです。つまり、特許庁の審査によっては、商標権が認められない可能性もある状態のものです。

No. 名称 出願人または権利者 商品・サービス区分 ステータス
8 エネルギーゼロ 積水化学工業(株) 6、9、19、36、37、42 審査中
9 エネルギーゼロ住宅 積水化学工業(株) 6、9、19、36、37、42 審査中
10 世界基準の家 パナホーム(株) 36、37、42 審査中

例えば、6番の「注文住宅」というような一般的とも思える名称が、特定の企業(この場合は株式会社リクルート)の登録商標となっていることに違和感を覚えた方がおられるかも知れません。
また、8番の「エネルギーゼロ」という名称が、積水化学工業株式会社の登録商標になったら、自社のビジネスがやりにくくなるなあと感じた企業の方がおられるかも知れません。

こうしたことに大きく関わっているものが、表中にある「商品・サービス区分」という番号です。

「商品・サービス区分」とは、商標登録出願をする際に、出願する者がどのような商品やサービスの範囲でその商標を使うつもりであるのかを決めておくものです。
国(特許庁)がある商標に対して、商標権の付与を認める場合、その商標権は、無制限にあらゆる商品やサービスに関して及ぶものではありません。そのようなことをすれば、商標権者が過剰な権利を持つことになって、商品やサービスの円滑な取引・流通に支障をきたすためです。

商標権を得た者は、その商標を予め指定した商品または役務(サービス)の範囲内で、独占排他的に使用することができます。
商標登録出願をする際には、商標の使用をする商品・役務について国が定めた「商品・役務区分」に従って内容及び範囲を指定する必要があります。
「商品・役務区分」は1類~45類に区分されており、その内、1類から34類までが商品区分で、残りの35類から45類までが役務(サービス)区分となっています。

例えば、先の表の7番の「PROUD」の例をみてみましょう。この商標の権利者である野村不動産株式会社は、商品・役務(サービス)区分として、「16、36、37」を指定しています。
具体的に、どのような商品やサービスが指定されているかを次に示します。なお、こうした情報は、特許庁のデータベースである「J-PlatPat(ジェイプラットパット)」により無料で閲覧することができます。

「PROUD」(商標登録番号:第5065990号)の商品・役務の区分と指定商品・指定役務
区分 指定商品・役務(サービス)
16 事務用又は家庭用ののり及び接着剤、封ろう、印刷用インテル、・・(中略)・・、文房具類、印刷物、書画、写真,写真立て
36 預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ、・・(中略)・・、建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、・・(中略)・・、土地の売買の代理又は媒介、建物又は土地の情報の提供、・・(以降略)
37 建設工事、建築工事に関する助言、建築設備の運転・点検・整備、船舶の建造、・・(中略)・・、煙突の清掃、建築物の外壁の清掃、窓の清掃、・・(以降略)

これを見て、ますます違和感を覚えた方がおられるかも知れません。
「PROUD」といえば野村不動産株式会社が提供する高級マンションをイメージされた方が多いでしょう。
しかしながら、上記の指定商品には肝心の「マンション」が出てきません。また、マンションとは無関係とも思われるような商品やサービスが指定されています。

実は、登録商標は法律上、不動産には認められないことになっています。不動産は通常の商品とは異なり、購入者が識別を誤る恐れが低いため、そうした規定になっています。このためマンションや戸建て住宅を含む建物それ自体を商品として指定することはできません。
そこで、企業側としては、不動産の取引サービス(区分では36)、建設工事(区分では37)などに関連する商品・サービスを指定して商標登録出願をしています。
野村不動産株式会社が区分16で印刷物を指定しているのは、マンションを販売するためのカタログなどについて、他人に勝手に「PROUD」という名称やマークを使わせないようにするためと考えられます。

商標に限らず、知的財産権は権利者になる側の視点と、利用する側の視点で考える必要があります。
まず、権利者になる側の視点としては、権利範囲を広めに設定できるようにすることです。
一般的には、文字だけの商品名称で登録商標を取得できた場合には、ロゴや図形を組み合わせた場合よりも競合企業にとっては回避しにくくなります。
冒頭で述べた、流行語の「PPAP」の事案など、その名称とは無関係の者が商標登録出願をするのは、文字だけの名称で行われることが通常です。そして、その名称を使って事業を行う方に対して、権利譲渡やライセンス契約を迫ることを目的にしていると考えられます。
「PROUD」の例では、一見すると無関係とも思われる商品・サービスが指定されています。これは、「PROUD」の名称やマークを他人に無断で使用させない効果を広く設定することで、自社にとって好ましいブランドを構築するためと考えられます。

利用する側の視点としては、まずは他人の商標権を侵害しないように注意することです。ただし、他人が特定の名称を登録商標にしたからといって、それが必ずしも自社の事業において好ましくない影響を及ぼすことにはならないということを知っておくことが肝要です。
例えば最初の表でも登場しました、株式会社リクルートの登録商標「注文住宅」(登録番号:第5841063号)が商品として指定しているのは、区分9では「録音済みのコンパクトディスク」など、区分16では「雑誌、新聞、ムック」となっています。つまり住宅や建設とは直接関係のないものばかりですので、住宅関連の商品やサービスに「注文住宅」という名称を使用しても、通常はこの登録商標の権利を侵害することにはなりません。リクルートとしては、住宅情報誌に関連した範囲に限って「注文住宅」の登録商標を取得したと考えられます。

3.商標に関する相談窓口・補助金

商標権を含む知的財産権に関しては、中小企業の方のための相談窓口が整備されています。
例えば「知財総合支援窓口」が全国に設置されています。東京都であれば「東京都知的財産総合センター」が中小企業の方の知財相談を受け付けています。
自社として権利を取得する際や、他人の権利の侵害を予防するためにこうした公的な支援窓口を活用されるとよいでしょう。

なお、一部の自治体では商標出願に利用できる補助金・助成金の制度を設けています。次回のコラムではそうした補助金・助成金の新年度における状況が分かると思いますので、あらためてご紹介いたします。

4.既存住宅の商標に関する国の動き

ネーミングとは話が少しずれますが、既存住宅(中古住宅)のビジネスに関連した、商標を巡る国の動きがありましたのでご紹介します。
国土交通省は2017年の1月23日に、一定の品質以上の既存住宅に新たな商標を付与する制度創設に向けた検討会を開いたということです。品質とは、例えば①新耐震基準に適合していること、②インスペクション(建物状況調査)を実施し、その結果を開示すること、③構造上の不具合や雨漏りが認められないこと、などです。

この制度の仕組みは参考資料として公開されている「『新しいイメージの既存住宅』 の情報提供制度に係る基本的な考え方(案)」に図示されています。

『新しいイメージの既存住宅』 の情報提供制度に係る基本的な考え方(案)

やや複雑なのですが、要は国が設定した商標を、事業者団体を通じて要件を満たす事業者にライセンスするような方向で検討しているということです。つまり、品質が優良な既存住宅については、国側が取得する商標をライセンスする形で「お墨付き」を与えるということです。
これによって品質が優良な既存住宅についてはその価値が正当に評価され、適正な価格で取引されるようにすることを目的としています。

前述のとおり、よいネーミングには、広告効果が期待できます。広告費を抑制しながらも、自社の商品やサービスの認知度を高め、受注につなげる一連の活動が行いやすくなります。

次回(後編)では、よいネーミングの条件や、よいネーミングを行いための発想法などについてご紹介します。

 

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