中小企業診断士が語る!知れば得するノウハウ集

松平 竹央

皆さま、こんにちは。一般社団法人城西コンサルタントグループ(JCG)の松平です。

今回(第9回)は、平成28年7月1日に施行されたばかりの「中小企業等経営強化法」に基づく中小企業支援策についてご紹介します。

Vol.9 新しい中小企業支援制度 「経営力向上計画」の策定と活用

1.「中小企業等経営強化法」の概要

「中小企業等経営強化法」は、労働力人口の減少、企業間の国際的な競争の活発化等の経済社会情勢の変化に対応し、中小企業等の経営強化を図ることを目的としています。
この目的のために、事業所管大臣が事業分野ごとに指針を策定するとともに、中小企業等の経営強化のための支援措置が講じられます。

具体的には、中小企業等がこの法律に基づく「経営力向上計画」を策定し、国からの認定を受けることで、各種の支援を受けることができるようになります。この「経営力向上計画」の制度の仕組みは、本コラムのVol.4で紹介しました、「経営革新計画」に近いものです。
http://www.housingworld.jp/business_challenge/vol04.html
「経営革新計画」では文字通り、新事業を創出するような革新的な経営活動を行う計画を対象としていますが、今回ご紹介します「経営力向上計画」では、もっと広範囲な経営活動が対象となります。
より具体的には、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する活動が「経営力向上計画」の対象となります。

2.この制度を活用するメリット

「経営力向上計画」の認定が得られますと、次の図1の右上の箇所で示すような支援を受けることができるようになります。

図1: 経営力向上計画制度の概要

経営力向上計画制度の概要

(1)固定資産税の減税
「経営力向上計画」が認定された事業者は、法律の施行日(平成28年7月1日)から平成31年3月31日までに生産性を高めるための機械装置を取得した場合、その翌年度から3年度分の固定資産税に限り、その機械装置にかかる固定資産税が1/2に軽減されます。
ただし、機械装置については次のような要件がありますので注意が必要です。その要件とは、1) 販売開始から10年以内のものであること、2) 旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が 年平均1%以上向上するものであること、3) 160万円以上の機械及び装置であることです。

(2)金融支援
「経営力向上計画」が認定された事業者は、政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けることができます。

(3)その他(補助金・助成金に関する優遇措置)
この項目は、政府が発行している「中小企業等経営強化法」の説明資料には明記されていないのですが、平成27年度補正予算による経産省の「ものづくり補助金」の2次公募では、この「経営力向上計画」の認定を受けた事業者の申請は原則として加点して審査することとされています。このような補助金・助成金に関する優遇措置が今後も期待できるものと考えられます。

3.認定手続きの流れ

「経営力向上計画」の認定を得るための手続きの流れの例を、先ほどの図1で説明しましょう。
「経営力向上計画」の策定と申請は、中小企業等の方が行うものです。そのために中小企業庁が認定する、いわゆる「経営革新等支援機関」が計画の策定と申請の支援を行う役割を担っています。

この図1では、申請事業者となる中小企業等の方が、①まずは「経営革新等支援機関」にご相談されるところから開始します。自社において、この制度を活用するメリットがあるかどうかといったことからご相談されるといいでしょう。②ご相談を受けて、「経営革新等支援機関」が申請事業者に対して制度の解説、計画の策定や申請書の作成の支援を行います。計画を策定することの前段と位置付けられる自社の現状認識についても、「経営革新等支援機関」と相談しながら行うことで客観的な現状認識ができ、経営課題をより明確にすることができるでしょう。③申請事業者が作成・準備した申請書類を所定の機関に提出します。④所定の機関で審査が行われ、計画が認定となった場合には申請事業者に認定書が交付されます。

なお、筆者が所属しております一般社団法人城西コンサルタントグループは「経営革新等支援機関」として認定されていますが、「経営革新等支援機関」からの助言を受けるにあたっては、本コラムの前回にてご紹介しました、外部の専門家を活用するための相談・派遣制度の活用もご検討されるといいでしょう。

4.申請書類

「経営力向上計画」の認定を得るために提出すべき書類は主に次の2つです。いずれも1つのWord形式の電子ファイルで提供されています(ダウンロードが可能です)。
まず1つめは、「様式第1(経営力向上計画に係る認定申請書)」です。これには事業者名は代表者氏名等を記載する程度の、いわば送付状といったものです。
2つめは「(別紙)」という表記となっていますが、最も重要な書類である「経営力向上計画」です。この「経営力向上計画」の書式は提供されているWordファイルではわずか2枚の書式に8項目の記載事項を書くだけという簡潔なものとなっています。

次の表1に、記載すべき8項目と、それぞれどのような項目を記載していくのかについて整理しました。

表1: 経営力向上計画の記載事項
記載項目 説明
1 名称等 事業者の氏名または名称ほか等を記載します。
2 事業分野と
事業分野別指針名
・事業分野
計画に係る事業の属する事業分野について、日本標準産業分類の小分類を記載します。
・事業分野別指針名
計画に係る事業の属する事業分野における事業分野別指針を記載します。本稿を執筆している時点において、事業分野としては、「1製造業」、「2卸・小売業」、「3外食・中食産業」、「4医療」、「5保育」、「6介護」、「7障害福祉」、「8貨物自動車運送業」、「9船舶」、「10自動車整備」の10分野が提示されています。
本コラムの読者の皆様の事業としましては、「1製造業」、「2卸・小売業」に該当しなければ、この10分野には該当しないというケースが多いと想像します。
なお、事業分野別指針が定められていない場合には記載不要です。
3 実施時期 3年以上5年以内で記載します。
4 現状認識
①自社の事業概要
②自社の商品・サービス等の状況
③自社の経営状況
①自社の事業概要
現に行っている事業内容、自社が事業として営む事業(主業、副業)と事業構成、売上高など、自社の事業等について記載します。
②自社の商品・サービスが対象とする顧客・市場の動向、競合の動向
自社の商品・サービスについて、顧客の数やリピート率、主力取引先企業の推移、市場の規模やシェア、競合他社との比較などにおける、自社の強み・弱み等を記載します。
③自社の経営状況
売上高増加率、営業利益率、自己資本比率等の指標について、企業の規模や能力・改善可能性に応じて可能な範囲で分析し、記載します。
5 経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標
・指標の種類
・A 現状(数値)
・B 計画終了時の目標(数値)
・伸び率((B-A)/A)(%)
「目標指標の種類」欄は、事業分野別指針で定められた指標がある場合には当該指標を記載し、事業分野別指針が定められておらず、基本方針にしたがって策定する場合は、「労働生産性」を指標として記載します。
本コラムの読者の皆様の事業の場合には、「労働生産性」を指標とする場合が多いかも知れません。
*労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量(労働者数又は労働者数×1人当たり年間就業時間)
6 経営力向上の内容 「4 現状認識」等を踏まえ、事業分野別指針を参照して、経営力向上のために取り組むことを具体的に記載します。
7 経営力向上を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
・使途・用途
・資金調達方法
・金額
「使途・用途」欄には、実施事項ごとに、その事項を実施するのに要する資金について、その部分の具体的な使途・用途を記載します。
「資金調達方法」欄には、自己資金、融資、補助金等を記載します。
8 経営力向上設備等
の種類
・設備等の名称/型式
・単価
・数量
・金額
固定資産税の軽減を活用する場合、この欄に記載します。
なお、経営力向上設備等を取得する場合には、所定の書類(工業会等による証明書)を添付する必要があります。

この「経営力向上計画」のポイントを4つ挙げるとすれば次のようなことです。

1つめは、言葉の意味だけでは漠然としている「経営力」を、労働生産性や売上高経常利益率という指標で数値として推し量ろうとしていることです。さらに、事業分野によって重要となる指標は異なる点を踏まえ、事業分野ごとにそうした指標が掲げられています。
2つめは、「経営力」の指標を明確にした上で数値による現状認識とその数値をどの程度向上させるかといった目標設定を行い、設定した数値目標を達成するための取り組み事項を具体化することです。どの程度の高さの目標を設定するかにつきましては一応の目安は提示されていますが、「経営革新等支援機関」等とご相談して検討されることをお勧め致します。
3つめは、実際に経営力向上を図るための取り組みには資金が必要になることが多いため、資金の額や調達方法を明確にすることで、実効性のある計画を策定することです。
そして4つめは、設備導入を経営力向上を果たすための手段として位置付けることで効果的な設備導入を促すことです。

こうした点を理解した上で「経営力向上計画」を策定することが重要です。

5.計画申請から認定までに要する期間

計画申請から認定までに要する標準の処理期間は30日ですが、計画に記載された事業分野が複数の省庁の所管にまたがる場合は45日です。
ただし申請書に不備が多い場合は、各事業所管大臣からの照会や申請の差戻しが発生し、手続時間が長期化する場合があります。
なお、当然ながら、申請に先立って計画書を策定するにも相応の時間が必要になります。余裕を持って申請を行うことが肝要です。

 

今回は「経営力向上計画」に関してポイントとなる事項をご紹介しました。
「経営力向上計画」は認定を得て各種の支援を受けることができるようになることが目的ではありません。各種の支援策や経営革新等支援機関の助言を上手に活用しながら、現実に自社の経営力向上の目標を達成していくのだという認識が大切です。
皆様の事業におかれましても、本制度の活用をご検討されてはいかがでしょうか?
なお、本稿では「経営力向上計画」の制度に関する事項の網羅性よりも簡潔性を優先させて記述しております。従いまして、本制度を活用するための諸要件については割愛しているものがございますので予めご承知おき下さい。

さて、前回のコラムでも紹介致しましたが、筆者は去る5月26日に、「住スタイルTOKYO 2016」の会場において『知って得する!展示会や販売促進に使える補助金の活用術』と題した特別セミナーを行わせて頂きました。来年以降の「住スタイルTOKYO」への出展を想定した補助金の活用策などについてご紹介しました。

本コラムの読者でご希望される方は下記フォームよりご請求頂きましたらセミナーで配布した資料(スライドのコピー)のPDFファイルを無料で進呈致します。
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