中小企業診断士が語る!知れば得するノウハウ集

松平 竹央

皆さま、こんにちは。一般社団法人城西コンサルタントグループ(認定支援機関)の松平です。

今回(第12回)は、以前も紹介しました、「中小企業等経営強化法」に基づく「経営力向上計画」について、その申請事例等についてご紹介します。

また、この「経営力向上計画」を申請するに際しては、認定支援機関(経営革新等支援機関)に支援する役割が期待されており、これについてもご紹介します。

Vol.12 「経営力向上計画」と認定支援機関の役割

1. 前回までの「経営力向上計画」に関する記載のおさらい

以前に本コラムでご紹介した後に、 中小企業庁ほか関係機関からいくつか追加で情報提供等がありましたので、簡単におさらいしながら、新たな情報等についてご紹介します。

(1)第9回コラムについて

第9回では、次のような事項についてご紹介しました。

  1. 「中小企業等経営強化法」の概要
  2. 「経営力向上計画」の制度を活用するメリット
    固定資産税の減税/金融支援/その他(補助金・助成金に関する優遇措置)
  3. 認定手続きの流れ
  4. 申請書類
  5. 計画申請から認定までに要する期間

固定資産税の減税(軽減措置)は、生産性向上設備(経営力向上設備)を取得した場合が対象となります。具体的にどのような装置がこの生産性向上設備(経営力向上設備)となり得るのかについて、 中小企業庁のWebサイトに「固定資産税の軽減措置の対象」として示されました。これで少し分かりやすくなりました。

また、固定資産税の軽減措置を受けるためには、取得する機械装置が性能や仕様上、生産性向上設備(経営力向上設備)としての要件を満たすことを証明する書類、すなわち「工業会等による証明書」が必要です。
各工業会においても「経営力向上計画」への対応が進んだようで、「工業会等による証明書」のキーワードでWeb検索しますと、これに関する様々な情報を得ることができるようになりました。

「経営力向上計画」の支援措置(メリット)の1つでもある金融支援につきましても、各地域の信用保証協会が「経営力向上関連保証」という保証制度を創設しています。この保証制度は、今後利用されることが多くなりそうな制度です。

なお、国が示す「事業分野別指針」につきましては、第9回のコラムの執筆の後に1分野(旅館業)が追加されました。本稿を執筆している時点において事業分野としては、「1 製造業」、「2 卸・小売業」、「3 外食・中食産業」、「4 旅館業」、「5 医療」、「6 保育」、「7 介護」、「8 障害福祉」、「9 貨物自動車運送業」、「10 船舶」、「11 自動車整備」の11分野が提示されています。

(2)第11回コラムについて

前回すなわち第11回のコラムでは、次回の「ものづくり補助金」(平成28年度第2次補正予算)における「経営力向上計画」の優遇措置の見通しについてご紹介しました。

次回の「ものづくり補助金」につきましてはすでに事務局の募集が始まっており、事務局の「公募要領」が開示されています。
この「公募要領」には、「1.業務の目的」として、次のように書かれています。  「国際的な経済社会情勢の変化に対応し、足腰の強い経済を構築するため、経営力向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資 等の経費の一部を補助することにより、中小企業・小規模事業者の経営力向上を図ることを目的とする。」
この内容が、次回の「ものづくり補助金」の公募要領の事業目的に踏襲されるとしますと、「経営力向上計画」の扱いは、前回の「ものづくり補助金」における扱いよりも一層、踏み込んだものになる可能性があります。
勇み足となることを恐れずに述べますと、「経営力向上計画」の認定取得が申請者資格の要件とされる可能性があります。  
また、一般型および小規模型については、経営力向上計画の認定を受け、雇用・賃金を増やす計画に基づく取組みについては補助上限額を倍増する旨の記載があります。  
前回(平成27年度補補正予算の2次公募)では、中小企業等経営強化法による「経営力向上計画」の認定事業者(一般型のみ)は審査において「加点」される方式が採用されましたが、次回の「ものづくり補助金」の事務局の「公募要領」においては「加点」に関する記述は見当たりませんでした。
いずれにしましても、次回の「ものづくり補助金」の申請を検討されている方は、「経営力向上計画」への備えを早めに着手されるといいと思います。

2.「経営力向上計画」の申請支援事例と認定支援機関の役割

「経営力向上計画」の制度は、これを申請する中小企業等の方においては手続き等がなるべく簡単なものになるように設計されています。
しかしながら、制度の全容や制約条件を正確に把握することは実はそう簡単ではありません。
この制度が円滑に活用されるためには、認定支援機関等がこの制度をきちんと理解した上で中小企業の皆さまを適切に支援していくということが前提条件として想定されていると思われます。 従いまして、経営力向上計画を作成に際しては、事前に、認定支援機関等に相談されることをお勧めします。

(1)支援事例

認定支援機関である、私たち城西コンサルタントグループ(JCG)の会員による「経営力向上計画」の申請支援事例をいくつかご紹介します。
いずれの事例も、すでに当局から認定書が発行されています。

A社の事例
事業分野 製造業
支援のきっかけ 公的支援機関による経営強化法セミナー・相談会の開催
事業者(申請者)の目的 ①「ものづくり補助金」における優遇措置の獲得
② 固定資産税の軽減措置
支援者側のスタンス 公的支援機関における業務の一貫として支援
主な実施項目 経営力向上のための設備投資
B社の事例
事業分野 製造業
支援のきっかけ 公的支援制度(専門家派遣)による別テーマの経営支援
事業者(申請者)の目的 ①「経営力向上計画」の認定を得ることで資金提供者に対して健全経営への取り組みをアピールする(IR活動の一貫)
②自社の経営課題や財務状況を「見える化」し、経営陣を含む全社員の意識改革を図る
③国からの認定書を得ることで、経営者自身の動機付けを図る
④「ローカルベンチマーク」による財務診断で課題を見える化する
支援者側のスタンス 当初の専門家派遣とは異なる制度を活用した形での支援
主な実施項目 ①事業パートナーを活用した受注活動の強化
②顧客情報を活用した商品開発
③知的財産権の取得による交渉力(対事業パートナー、および対顧客)の強化
C社の事例
事業分野 卸売業
支援のきっかけ 以前に経営診断を実施して以来、不定期的にミラサポ等の公的支援制度を活用した支援を行ってきた
事業者(申請者)の目的 ①経営後継者への事業承継を控え、少しでも経営状況を改善したい
②売上拡大に伴う資金繰りの悪化に対処するため、本認定を得ることで金融機関による評価を高めたい
③「経営力向上関連保証」に関心あり
④「ローカルベンチマーク」を用いて本格的な経営分析を行う
支援者側のスタンス 中小企業診断士による無料の経営診断の制度を活用した支援
主な実施項目 ①事業パートナーを活用した受注活動の強化
②顧客の声を踏まえた高付加価値商品の取り扱い
③Webを活用したセールスプロモーションの強化

申請者にはそれぞれ目的があります。固定資産税の軽減措置や、「ものづくり補助金」における優遇措置を得たいという方も多いのですが、この「経営力向上計画」の制度を、実際に経営力を高めるためのきっかけにしようという目的で申請される方も多くおられます。

(2)認定支援機関の役割

認定支援機関等の支援者側には、当然のことながら、この「経営力向上計画」の制度の全容について理解しておくことが求められます。
申請を検討される事業者様に対して制度の解説、期待する支援措置を受けられそうかどうかの見解の伝達から始まり、計画の策定や申請書の作成の支援を行うことになります。各支援機関では、こうした支援活動をセミナー、説明会、研修、個別対応等の形式で実施しています。
ところで、「経営力向上計画」の策定にあたり、認定支援機関から支援を受けた場合には、「経営力向上計画」の「申請書提出用チェックシート」にその認定支援機関の名称等を書いて提出することになっています。
この記載は必須事項ではなく、認定支援機関の確認印も不要です。つまり、「経営力向上計画」の策定おける認定支援機関の関与は、認定を取得する上での必須要件ではありません。
このため、民間の支援機関にとりましては、「経営力向上計画」の申請支援だけで対価を頂くことは難しいといえるかも知れません。
私たちJCG会員による支援事例でも、公的支援機関の相談員の立場として、または何等かの公的な制度、中小企業診断士による無料経営診断の制度などを活用したものが多くなっています。

支援機関としては、商工会・商工会議所、よろず支援拠点、中央会、金融機関などを挙げることができます。かつ信用できそうな機関を選ぶといいでしょう。

ところで、中小企業等経営強化法という法律においても、認定支援機関には、「経営力向上計画」に関して果たすべき役割が規定されています。その役割は、大きく2つあります。
1つめは、経営力向上を行おうとする中小企業等の経営資源の内容、財務内容その他経営の状況の分析することです。
「経営力向上計画」の申請書には、「4.現状認識」という記載項目がありますが、中小企業等の経営に関して正確かつ客観的な状況分析を行うことが、認定支援機関の果たすべき役割として求められているということです。
2つめは、経営力向上に係る事業の計画の策定に係る指導及び助言並びに当該計画に従って行われる事業の実施に関し必要な指導及び助言を行うということです。
つまり、現状分析から「経営力向上計画」の計画策定、実施に至るまでの一貫した支援が認定支援機関の果たすべき役割として求められているということです。
私たちJCGでは、申請書の作成支援だけに限定せず、経産省が推奨する経営分析用のツールである「ローカルベンチマーク」を用いた経営診断の支援、経営力向上に資するセミナーや研修等も実施して参りたいと考えております。

3.「経営力向上計画」の書き方・作成のポイント

ここでは、中小企業の方が自ら「経営力向上計画」を作成される場合も想定し、認定を得やすくするための書き方のポイントを述べます。
申請書類と記載項目につきましては、本コラムの第9回で紹介していますので、今回は補足的な事項を述べます。
申請書の書き方は、 中小企業庁が提供している「中小企業等経営強化法 経営力向上計画 策定・活用の手引き」に詳しく解説されています。申請書記載例もいくつか紹介されていますので、それらを参照して頂くことが前提となります。
なお、申請書を作成するに際しては、認定を得ること自体を目的化せず、本制度を活用して本来の目的である経営力の向上を目指すという本質を忘れないことが大切であることはいうまでもありません。

(1)認定取得の流れを確認する

概ね、次の図で示すような流れを意識して申請書を作成されるとよいでしょう。

「経営力向上計画」の書き方・作成のポイント

このような流れを意識する必要があるのは、次のような注意事項があるためです。

  1. 認定取得により利用可能となる支援措置については、全ての認定取得者が対象者になるものではありません。自社が支援措置の対象者になるのか、早い段階で確認しておくことが肝要です。
  2. 固定資産税の軽減措置を受けようとされる方は、特に注意が必要です。
    認定取得のタイミングが適切でないと、所望の措置を利用できなくなってしまう場合があります。
    また、「工業会等による証明書」を申請時点で入手しておくことも必要です。
    このため、特に固定資産税の軽減措置を受けようとされる方は、認定書が必要になる時期から逆算して申請スケジュールを立てた上で、余裕をもって申請されることをお勧めします。
  3. 中小企業庁の「経営力向上計画 策定・活用の手引き(申請の手引き)」によれば、金融支援のご活用を検討している場合は、経営力向上計画を提出する前に、関係機関にご相談くださいとのことです。
    また、中小企業庁の「中小企業等経営強化法 経営力向上計画に関するQ&A集」によれば、信用保証を利用する場合には、民間金融機関にも事前に御相談下さい、とのことです。
    さらに、この「Q&A集」によれば、経営力向上計画の認定を受ければ自動的に金融支援を受けられるわけではなく、別途、金融機関や信用保証協会において審査が行われる旨が述べられています。

このように、申請に際しては「経営力向上計画」の制度の全容や制約条件を理解しておく必要があり、これには相応に手間がかかります。
このため、「経営力向上計画」を作成する前に、経営革新等支援機関(認定支援機関)等に相談されることをお勧めします。

(2)重要な記載事項は「4 現状認識」~「6 経営力向上の内容」

「経営力向上計画」の記載事項として、審査において特に重要となるものは、「4 現状認識」・「5 経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標」・「6 経営力向上の内容」の3つです。
「経営力向上計画」を作成するに際しては、国が示す「基本方針」や「事業分野別指針」を参照する必要があります。特に「5 経営力向上の目標・・・」と「6 経営力向上の内容」について書く際には、「基本方針」や「事業分野別指針」で示されている「経営力向上」のための取り組み事項を選択することが原則となります。

そして、「4 現状認識」~「6 経営力向上の内容」までの内容が、ロジカルに関連しているように書くことが肝要です。それは、次のようなことです。

  1. 「4 現状認識」では、労働生産性が低い、またはまだまだ改善の余地があることの原因を特定します。
  2. この原因を取り除くため、「6 経営力向上の内容」に取り組む計画を立てます。
  3. その結果として、「5 経営力向上の目標・・・」で記載する労働生産性等の数値目標が達成されそうな見通しを示します。

ややテクニック論になりますが、「経営力向上計画」にて書くべき内容は、次のように組み立てるとよいでしょう。

  1. 「基本方針」や「事業分野別指針」が示す、「経営力向上」のための取組み事項のうち、自社にとって効果が高そうなものを選びます。これでまず、「6 経営力向上の内容」で書くべき事項を想定します。
  2. 上記①に取り組むことによって取り除くことが期待できる、労働生産性が低い、またはまだまだ改善の余地があることの原因を特定します。
  3. 上記①に取り組むことによって「5 経営力向上の目標・・・」で記載する労働生産性等の数値目標が達成されそうな見通しを得ることができるか確認します。

このような考え方のプロセスで、記載事項の骨格を決め、それから詳細かつ簡潔に記載事項を肉付けしていきます。とりわけ、「6 経営力向上の内容」については、自社として何をするのか、審査員が理解できるように具体的に書くことが肝要です。
ページ数は原則で2ページとし、必要があれば3ページに増やして書く、と考えて頂ければ結構です。

なお、前述のとおり、国が示す「事業分野別指針」につきましては、本稿を執筆している時点において事業分野としては、「1 製造業」、「2 卸・小売業」、「3 外食・中食産業」、「4 旅館業」、「5 医療」、「6 保育」、「7 介護」、「8 障害福祉」、「9 貨物自動車運送業」、「10 船舶」、「11 自動車整備」の11分野が提示されています。
これに該当しない事業分野である場合には、「基本方針」の内容に沿って記載します。

(3)「申請書提出用チェックシート」による確認を怠らない

この「申請書提出用チェックシート」は、提出書類の1つです。このチェックシートは、主に申請書の記載ミス等を防ぐために用意されたものです。従いまして、申請書を作成した時点でこのチェックシートによる確認をしっかりと行うとよいでしょう。
このチェックシートを読むと、どのようなことに注意して申請書を作成する必要があるのかについての認識が深まります。このため、「経営力向上計画」の作成を着手する時点でも、このチェックシートに一度目を通しておかれることをお勧めします。

なお、「経営力向上計画」の審査は、合否を決めることを目的に行われるものではありません。従いまして、審査において軽微なミスなどが見つかった場合には審査担当者から連絡が入る場合があります。
そして、修正を行うことが認められます。印を押さないページの修正については、メールで差し替え用ファイルを送ることで解決する場合もあります。この「申請書提出用チェックシート」は、提出書類の1つです。このチェックシートは、主に申請書の記載ミス等を防ぐために用意されたものです。従いまして、申請書を作成した時点でこのチェックシートによる確認をしっかりと行うとよいでしょう。
このチェックシートを読むと、どのようなことに注意して申請書を作成する必要があるのかについての認識が深まります。このため、「経営力向上計画」の作成を着手する時点でも、このチェックシートに一度目を通しておかれることをお勧めします。

なお、「経営力向上計画」の審査は、合否を決めることを目的に行われるものではありません。従いまして、審査において軽微なミスなどが見つかった場合には審査担当者から連絡が入る場合があります。
そして、修正を行うことが認められます。印を押さないページの修正については、メールで差し替え用ファイルを送ることで解決する場合もあります。
しかしながら、「経営力向上計画」の申請書は初めからミスなく仕上げることが原則です。

 

さて、本コラムが公開された直後になると思われますが、10月20日(木)に、「住宅ビジネスフェア2017」の『出展検討説明会』の第一部として、『これから始まる「ものづくり補助金」への準備 (~認定取得すると有利になる? 「経営力向上計画」 とは?~)』と題した特別セミナーを開催します。
詳しくはこちらをご覧ください。

 

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