中小企業診断士が語る!知れば得するノウハウ集

松平 竹央

皆さま、こんにちは。一般社団法人城西コンサルタントグループ(JCG)の松平です。

本コラムの第11回(平成28年9月下旬に公開)では国の平成28年度補正予算について採り上げました。今回(第15回)は、平成29年最初のコラムということになりますが、近く国会において平成29年度の予算案が本格審議入りします。そこで今回は本コラムの読者の皆様にとって関連のありそうな中小企業政策と予算案についてご紹介します。

Vol.15 中小企業支援政策の今後の見通し(平成29年度予算の動向)

1.平成28年度補正予算の振り返り

第11回のコラムでは平成28年度補正予算の動向と、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)普及加速事業補助金」、「ものづくり補助金」、「小規模事業者持続化補助金」の3つの補助金についてご紹介しました。

今回の「ものづくり補助金」に関しましては、1月17日(火)が、「小規模事業者持続化補助金」につきましては1月27日(金)が申請受付の締め切り日となっています。「ZEH普及加速事業補助金」は二次公募までが終了しており、三次公募が1月23日(月)から2月17日(金)まで実施されます。

第9回と第12回のコラムでご紹介しました、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」に関連する低利融資制度のための予算も平成28年度補正予算として計上されています。

2.平成29年度の経済産業政策の重点項目

経済産業省が毎年打ち出す政策には、中小企業支援の政策が含まれています。この経済産業政策・中小企業政策とそれを実行するための予算を知ることで、中小企業にとってのビジネスチャンスにいち早く備えることができます。

経済産業省が公表している「平成29年度 経済産業政策の重点」という広報資料を次に示します。本コラムの多くの読者の方にとって共通的に関連性が高いと思われる中小企業政策の箇所を赤枠で示します。

平成29年度 経済産業政策の重点
http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2017/pdf/00.pdf

これによれば、例えば「中小企業等経営強化法」の活用拡大等を通じた、生産性向上・経営力強化支援が、重点政策の1つとして挙げられています。また、「中小・小規模事業者の資金繰り支援」、「信用保証制度見直しによる経営改善・生産性向上」といった金融支援政策もあります。こうした金融支援では、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定取得等によって有利に活用できることが期待されます。

これまで、本コラムでは様々な補助金・助成金についてご紹介してきました。しかしながら補助金・助成金には国や自治体が定めた事業期間、お金の使途といった条件があり、自社の事業活動とは合わないケースが少なくありません。一方、金融支援であれば、自社が必要とするタイミングに必要となる額の資金を調達する上で便利です。

現に、筆者が経営力向上計画の作成支援を行いましたいくつかの企業様では、新事業活動のために、あるいはIT投資、販売促進活動用の装置購入のために、信用保証協会による信用保証枠の拡大といった金融支援を活用されています。

3.平成29年度 中小企業政策関連予算案(経済産業省)について

次の表は経済産業省が公表している「平成29年度 経済産業省関連 予算案のポイント」から、本コラムの読者の方に関連性がありそうな事項をピックアップしたものです。

この予算案は各中小企業等に対して補助金等の形で直接的に支援するものだけでなく、商工会・商工会議所、よろず支援拠点など経営支援を行う機関の活動費に充てられるものも含まれています。

No. 項目 H29年度
予算案
H28年度
予算
1 中小企業・小規模事業者の経営力強化
1-1 小規模事業者の持続的発展(事業計画策定などの伴走型支援等) 92億円 92億円
1-2 中小企業・小規模事業者の海外展開支援(事業実現可能性調査、展示会出展などの海外販路開拓支援) 24億円 14億円
1-3 地域のニーズに対応できる複合商業施設の整備、商店街の公共的機能の維持・強化等 18億円 20億円
1-4 ものづくりに係る研究開発やサービス分野でのモデル開発支援によるイノベーション創出 130億円 140億円
2 活力のある担い手の拡大と事業環境の整備
2-1 中小企業等に対する資金繰り支援(信用補完、利子補給等) 226億円 244億円
2-2 創業経費の補助、中小企業再生支援協議会による事業再生・事業承継に対するマッチング支援等 72億円 67億円
2-3 よろず支援拠点整備や専門家派遣等による中小・小規模事業者の経営下支え 55億円 55億円

http://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2017/pdf/keisanshoyosan1.pdf

なお、エネルギー関連政策として、中小企業等の省エネ設備入替、住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化等、省エネ投資を促進するための予算案として、673億円(H28年度は625億円) が計上されています。

(1)展示会のための補助金について

本コラムの読者の方の多くは、展示会への出展とそれに使える補助金についてご関心が高いものと考えますが、国の補助金では国内の展示会への出展経費が補助対象となるものは多くありません。平成29年度予算案でもその傾向に変わりはありませんが、上記表の「1-1」にありますように、海外事業展開のための展示会の出展経費が補助対象となる補助金は登場しそうです。
なお、「住スタイルTOKYO/住宅ビジネスフェア」の出展に使える補助金・助成金につきましては、本コラムの第1回で採り上げていますのでご参考にして下さい。

(2)資金繰り支援について

日本政策金融公庫による基準利率と特別利率の利率差及び金利引下げのための財政措置などが行われる予定です。これにより中小企業・小規模事業者の新たな事業の展開について金融面から後押しが図られます。

(3)後継者問題・事業承継について

これまで本コラムでは特に採り上げてきませんでしたが、後継者問題・事業承継を経営課題としている中小企業が非常に多くなっています。
この課題につきましては、国としても重要課題と位置付けており、多面的な支援策が講じられています。平成29年度予算案では、上記表の「2-2」の内訳の項目として、「創業・事業承継支援事業」(11億円)、「中小企業再生支援・事業引継ぎ支援事業」(61.1億円)の2つの事業が準備されています。事業引継ぎ支援センター等による相談対応や後継者マッチング等が実施される見通しです。

(4)公的経営支援サービスについて

商工会・商工会議所、よろず支援拠点などによる公的な経営支援につきましては平成28年度並みの水準で提供されることが期待できそうです。
なお、専門家派遣を含め、公的経営支援サービスにつきましては本コラムの第8回で採り上げていますのでご参考にして下さい。

4.「ローカルベンチマーク」と「金融仲介機能のベンチマーク」について

昨年(平成28年)、経産省からは「ローカルベンチマーク」が、金融庁からは「金融仲介機能のベンチマーク」が公表されました。「ベンチマーク」とは、平たくいいますと経営状況等を把握し、より良い方向へ導くための「指標」のことです。

これは平成29年度予算案とは直接関係のある事項ではありませんが、国は、この2つの「ベンチマーク」を活用することで、中小企業・小規模事業者と地域経済の活性化を図ろうとしています。

「ローカルベンチマーク」は、中小企業等の経営診断等のためのものですが、この活用につきましては、先に示しました図、すなわち「平成29年度 経済産業政策の重点」の中で、「金融機関・支援機関等による共通指標の活用」という表現で示されています。

「ローカルベンチマーク」のイメージ図(一部)は、次のようなものです。

ローカルベンチマークのイメージ図

「金融仲介機能のベンチマーク」は、国(金融庁)が金融機関に指標を示すことで、各金融機関が取引先企業のニーズや課題に応じた融資やソリューション(解決策)の提供等を行い、取引先企業の成長や地域経済の活性化等に貢献することを後押ししようとするものです。

平成29年度にはこの「金融仲介機能のベンチマーク」の運用が各金融機関において徐々に本格化するものと予想されます。これによって、金融機関による中小企業・小規模事業者へのサービスが充実することが期待されます。すでに一部の金融機関では、取引先を紹介するマッチングサービスや、事業承継問題を解決するための支援サービス等に力を入れ始めています。

こうした動きを活用することで、中小企業等は金融機関と上手に付き合い、様々な経営課題を解決することができるかも知れません。そして、そのためには中小企業等は、経産省が示した「ローカルベンチマーク」を活用して、金融機関に対して適切に情報提供を行い、コミュニケーションを図ることが求められます。

5.予算案の今後の動き

平成29年度予算が成立するのは3月下旬頃になると思われます。予算が成立しますと、上記のとおり紹介しました各種の施策が順次実行されていきます。

その一方で、東京都など地方自治体による各種の中小企業振興策は早ければ1月下旬頃から公表が始まります。例えば東京都の「市場開拓助成金」は平成27年には1月下旬に、平成28年には2月下旬に申請の受付が始まりました。なお、東京都の平成28年度の「新・展示会等出展支援助成事業」は1月中旬時点においてまだ受付中です。

こうした動きをいち早く知るためには、金融機関や各種の公的経営支援機関(よろず支援拠点など)、中小企業庁による認定支援機関(認定経営革新等支援機関)との接点を作っておくことをお勧め致します。そうしたところから、自社にとって有用な施策や補助金・助成金等に関する情報を提供してもらうことができるはずです。

 

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